行 動 記 録 |
■ 7月31日(金) 晴れ後夕刻より曇り 今年は北アルプス西穂高岳か、五竜岳〜鹿島槍が岳を一時は計画していたが、女房の目の涙腺手術後であること、若干トレ−ニング不足や自分の腰痛も重なり、久しぶりに信州の山から離れ、マイカ−利用の伊吹山の高山植物撮り歩き登山と決定。 天候的には、今年は9連休スタ−ト時より安定した太平洋の高気圧にしっかり覆われ、好天が続いてきたが、いろいろな事情も重なり、出発は天候の下りはじめた後半に出掛けることとなる。 伊吹山は高山植物の宝庫と言われている山で、以前から車で訪れようと思っていたところであるが、夏山はどうしても信州に脚が向き、いままでお預けになっていた山である。植物の種類の豊富さでも有名なこの伊吹山には、たくさんの高山植物も自生しているお花畑も多いが、最近は荒廃がひどいらしく、数年計画で回復措置が取られているとのこと。高山植物のなかには、芽生えてから花を咲かせるくらいにまで育つのに10年近くかかるものも多いと聞く。訪れる者のマナ−にも問題があるとすれば、立入禁止区域の設定や、入山制限をしてでも守ってゆかないと、「種」が絶滅してからでは元には戻らない。いくら文明が進み、バイオ技術の発達し、人工培養のような高山植物が可能となったとしても、荒れ果てた山肌に植えつけられては何の魅力も持たない植物となることだろう。 車にいろいろ積み込み、朝7時に自宅を出発。月見山インタ−から阪神高速神戸線に入り名神高速関が原インタ−に向かう。車中で聞く道路情報では、名神竜王インタ−あたりで渋滞が発生している模様。伊吹山に着くのが少し遅れるが仕方なし。冷房を利かして快適に走らせ、大津サ−ビスエリヤで休憩をとる。大津からしばらく走ったところから渋滞となり、遅々として進まなくなること約1時間。やっと渋滞から抜け出し、通常走行に戻ってホッとする。 関が原インタ−を出れば約10分で伊吹山スカイラインのゲ−トとなり、往復料金と上の駐車料金の合計2160円を支払って登ってゆく。 ウィ−クデ−でもあり、車も少なく心地よいドライブを楽しむ。大きなヘアピンカ−ブを何度もくねり、ときおり窓から花の様子を探るがこの辺りはまだ草ばかり。色付いた花など一向に目に入ってこない。約30分の登りで9合目付近の駐車場に昼過ぎに到着。800台の駐車スペ−スに約半数の車が留まっている。近くの売店でうどんとそばの簡単な昼食を済ませ、散策に備え山の服装に着替えるつもりであったが、周囲の人達との釣り合いを考え、靴のみ山靴に履き替えジ−パン姿のままでスタ−トする。 ここまで来れば結構色々な花も目につく。道は数本付けられており、傾斜のきつい直登ル−ト、やや緩く付けられた右回り、左回りル−トなど、三々五々、観光客がそれぞれに散策してゆく。花は駐車場のある高さ付近を境に自生領域がハッキリしているようだ。シモツケソウ、カワラナデシコ、カワラナデシコより濃いピンクのタカネナデシコ、伊吹の名を持つイブキトラノオ、紫色鮮やかなウツボグサなど早速カメラの出番である。 やがて信州の夏山で見てきたお花畑の様子と何となく異なることに気がつき、何なんだろうと考えてみた結論はこうだ。たしかに伊吹山はどのガイドブックにも高山植物の宝庫・名所がうたってある。しかし、この山の標高は1377mと低く、しかも信州よりもかなり南に位置している。花の時期も信州の山では7、8月に一気に訪れあっという間に秋を迎え9月の後半には初雪も珍しいものではない。この時期に100種くらいの花々が一度に咲き競うことになるが、伊吹山ではここが違うところだ。5月頃から咲きはじめる花から始まって、6、7、8、9、10月それぞれの時期に分散し、花たちにとって最も咲き心地のよい時期 選んで咲いていることに他ならない。したがって、信州の山では色々の高山植物が一斉に見られるが、ここでは花の数は多いが種類が分散している分だけ若干単調にならざるを得ないことになる。この山は季節を変えて何度も訪れる楽しみがある山だということだ。 途中から南斜面側に脚を延ばし、冬のスキ−場の斜面を下の方に眺めながら下ってゆく。この辺りは観光客も訪れないため静かなコ−スであるが、すぐに花の数も減りやがて無くなってしまう。男性一人がスキ−場からの表登山道をフ−フ−喘ぎながら登ってきたが、時間の制約でここから下るという。「ここから上がお花畑」と知らせるも「バスの時間が・・・」と、ご苦労さん。 シシウド、モリアザミに混じって黄色い花を代表して咲いているかのようなカワラマツバ、その他オオバギボウシ、クガイソウ、クサフジ、ツリガネニンジン、メタカラコウ、シデシャジンなど色とりどりの花をカメラに収めながら頂上に到着。さっそくビ−ルで喉をうるおし持参してきた桃にかぶりつく。 山頂は広く、夜行登山者用の仮眠所を兼ねた売店や気象測候所が建っている。週末には夜行登山で涼を楽しむ登山者も多いと聞く。この山は独立峰だけに遮るものはなにも無く360°の展望だ。残念ながら天候は下り坂に向かっており、雲が徐々に多くなってきた。晴れていれば遠くは御獄山、乗鞍から加賀の白山、鈴鹿の山々、眼下には琵琶湖の青い湖面をはさんで比叡山から比良の山々が見えるそうだが今日は駄目。 頂上からは左回りル−トで下降、途中「お花畑の回復試験所」と表示され、ロ−プで囲まれた所があり、地肌が無残にさらけ出されていたが、伊吹山全体がこのような無残な姿になるようなことになれば大変である。数日前の新聞誌上に掲載された「伊吹山に危機・3年計画で整備事業開始」の記事を思い出す。酸性雨の影響も深刻だとの内容も記載されていたが、現代人の豊かさとの引き換えに突きつけられている「自然破壊」の現実を目の当たりに見せつけられたような気持ちで駐車場に戻る。 車の数もかなり減っており、とりあえず止めておいた場所から今夜の泊まりに備え、外灯と腰掛けのある場所に車を移動させ、夕食の準備にかかる。18時ころより雨雲が一層厚くなりときどきポツリポツリと降り始める。まだ6時だというのに厚い雨雲と夕暮れととも、に非常に濃いガスに包まれ薄暗い。 約20台になった車は我々同様今夜は泊まり組だろう。売店の人たちも下山し、広い軒下は仮眠や雨宿りが十分出来るようになっている。駐車場管理人事務所には交代で一人が泊まられるらしい。ちょっと立ち寄り話を聞いたが、今夜は雷雨になるかもしれないとのこと。先程一度ピカッとしたが雷鳴はなくまだ遠くのようだが余り気持ちのよい予感ではない。管理人の方の話だと、「ここの雷は地面を横に走るので車の中のほうが安全。無理して車外へ出ないほうがよい」との助言を受ける。 また、この山のマイカ−での夜行登山も人気があり、週末には800台の駐車場に4000台くらいが登ってくるため、ドライブウェイの中腹辺りで渋滞し、下ってくる分しか登ってゆけないらしい。 売店前の軒下に近いところに車を回し眠りに着く。ときおり激しい雨音に目をさますが時間の経過はなかなか遅い。夜中に中学生らしき団体がバス数台で登って来た模様。静かな山にひときわ賑やかな話し声が回りの眠りに雷鳴のように飛び込んでくる。 |
■ 8月1日(土) 濃霧 4時45分起床、車のなかでの仮眠は初めてであり、眠れたような寝不足のような、満足に手足を伸ばして寝られないことから、身体の節々がぎこちない。やはりテント持参にすべきであった。昨夜の霧雨から、今朝は雨は降っていないが凄い濃霧である。まだ明けやらぬ時刻のせいもあるが、ヘッドライトの光も霧に吸い込まれてしまい何も 見えない。まるで手さぐり状態でトイレの場所のあった方向に進がなかなか見つからず、うろうろしてしまう始末。駐車場の外灯のうち、水銀灯はなんとかぼんやり存在が確認できるが、オレンジ色のナトリュウム灯はガスに消されて全く確認できない。駐車している白い車などは2〜3mまで近づかないと見えず、下界ではなかなか遭遇できない現象にまた自然の力を感じてしまう。 外灯の下で朝食のパンと熱いコ−ヒを済ませ、テルモスにも熱いお茶を詰めて完了。今日の行動予定は、北尾根国見岳往復を計画しているが、天候の状況で適宜判断することとし、車で5分ほど下った北尾根分岐地点の空き地に移動、服装を整え6時25分出発。道はハッキリしているが予想以上に結構きつい下りから始まる。静馬が原との名前に似つかぬ傾斜を下り、鞍部になったところを過ぎ、小さなピ−クに着き時間的にも御座峰と判断し休憩。しかしこのあとしばらく進んだところに御座峰の道標の建つピ−クに着き、予定よりかなり遅いピッチにがっかり。写真を撮りながらのこと、まあこんなもんだろう。この辺りで森林限界となり花の数もめっきり少なくなる。それでもときどき、昨日の山頂周辺では見かけることの無かったキンバイソウや、赤花・黄花ツリフネソウ、モミジガサ、花弁が巴状に並んで咲くトモエソウなどをカメラに収めてゆく。が何せこの天候、今にも降りだしそうな雨雲の中、露出が心配だ。 この先、ほとんど花の期待も出来なくなった地点より引き返すこととし、熱いお茶で休憩をとる。相変わらず視界は悪い。昨日の頂上からの眺望がこの連休中続いた好天の最後だったようだ。かなり下ってきたのでここから引き返しの登りも結構しんどかろう。 思えばここ数年の夏山の天候は決して恵まれていない。昨年の八が岳も濃霧の中、カメラを濡らしながらの撮影登山、一昨年の北アルプス白馬から雪倉・朝日岳も途中雨具を付け、湿気に悩まされながらの撮影登山となったことなどを思い出しながら、持参した大きな桃をかじりエネルギ−を補給する。 車をデポしている北尾根登山道分岐点に9時35分帰着。山の服装から軽快な服装に着替え、濃霧のスカイラインをライトを付けスタ−ト。濃霧のなかから対向車がヒョッコリ現れるため、絶対にセンタ−ラインははみ出せない。エンジンブレ−キを利かせて下り、約20分で下のゲ−トを通過する。 関が原ICから名神高速に入り、途中大津SAで昼食休憩をとり、昨日のような渋滞もなく、14時30分帰宅。今年の高山植物の山旅を終える。 |