仲間と登った想いでの山々

神鍋山〜氷の山〜音水

と き 昭和34年7月25日(土)〜7月31日(金)
コ−ス 神戸=神鍋キャンプ〜氷の山〜横行〜音水〜瑠璃寺=姫路=神戸
メンバ 兵庫県ユースホステル協会行事に参加
行 動 記 録

■ 7月25日(土)〜7月27日(月) 晴れ

ユ−スホステルに入会して初めての行事参加である。三菱電機からは、松永君と二人で参加する。 神鍋キャンプ場に現地集合、持参の昼弁当を終えたのち、総勢約150名の開会式が開かれる。  国旗とHYH協会旗の掲揚、主催者の挨拶、2泊3日間の予定の説明などオリエンテ−ションのあと、各 班のメンバ−に分かれての共同生活にはいる。  会社に入社してから、何度かのキャンプの経験はあるが、こんなに大勢が一堂に集まってのキャンプは初 めてである。まずテントの設営からはじまるが、何分大所帯のためテントの数も40張位あるため、間隔を きちんと整え、一列に整然と張ってゆく。40張が並び終わると壮観である。  タイムスケジュ−ルにせかせられながら夕食の準備や周辺の清掃など次々とこなしてゆく。我々の班は、 男子6名、女子4名のメンバ−であるが、名前と顔があってくるうちに、次第にチ−ムワ−クも生まれはじ め、夕食頃にはすっかり昔からの友達気分となる。全員の合同キャンプファイヤ−は、明日に行われるので 今日は、各班で明日の班別の出し物の打合せをする。いろいろ検討した後、寸劇をやることになり早速細か な打合せを行う。  都会ではなかなか望めない満天の星空のもと、初日の夜を過ごす。  2日目の今日は神鍋山周辺のハイキングにでかける。神鍋山は、何百年か昔には火山活動をしていた山と のことであり、頂上には大きな噴火口が残っている。また、山麓には風穴と呼ばれる噴火のときに噴煙が山 腹を横に吹き出した跡の横穴があり、中に入ってみる。中はヒンヤリと冷たく、奥には夏でも氷が保管され ているとのことであった。地元のホステラ−の方々の案内で一回りしたのちテントサイトに戻る。  2泊3日のキャンプのメインイベントである、今夜のキャンプファイヤ−の最後の打合せを済ませ、夕食 を終え待機する。  陽が西の空に沈みはじめたころに始まったキャンプファイヤ−は、厳粛な点火式のセレモニ−で始まり、 次第に盛り上がってくる。各班の趣向を凝らした出し物が次々と披露され、我々も即席の寸劇をなんとかや り遂げホットする。  夜も更けファイヤ−の勢いも次第に小さくなってゆくころには、150人の合唱も名残を惜しむ歌声とな り、静かに宴の終わりを迎える。

■ 7月27日(月) 晴れ

楽しかったキャンプも閉会式を終え、テント撤収の後解散。これより但馬山地縦走に行く者7名は、最初 の目的地、鉢伏越え大久保のHYH"万両"へ向け出発する。  一緒に参加してきた松永君は、この縦走には参加せずメンバ−の7名のなかには知り合いはいない。これ より更に3泊の縦走にそなえ緊張する。主催者のはからいでゴ−ルとなる瑠璃寺へ寝袋等キャンプの個人装 備をトラックで届けてくれる話もあり、殆どの者は預けていたが自分は最後まで個人装備も計画どうり持参 しての縦走とした。  リ−ダ−の進む後ろからおちこぼれないようについてゆく。自分としてはまだ経験も浅く、コ−スを正確 に進んでいく自信もない。そのうち自分にも自信をもってコ−スを見極めながら進んでゆくだけの力量をも 身につけたいとの思いを噛みしめての山行となる。稲葉からやや道幅の広い山道を村岡の町へ向け黙々と進 む。村岡から、大笹までは自動車道となり、暑さがこたえる。途中で何度かの休憩をとりながら、リ−ダ− の判断で、大笹の村から鉢伏山への取り付き点と思える尾根に取りつく。 地図を頼りに進むが果して思いどうりのコ−スか否かは稜線に上がって見なければわからないとのことらし く一抹の不安もよぎるがここは信じるしかあるまい。  鉢伏北の斜面を登り詰め、鉢伏山の頂上を目指していた我々に迎えられた所は、かなり東に偏った地点に たどり着いたことに気がついたのはすぐであった。太陽は夏とはいえ既にかなり西に傾き日没も時間の問題 になっている。幸いリ−ダ−は沈着冷静な態度を示しており、特に不安もなさそうなのはやはり経験からく る余裕なのかと信頼する。稜線を約1時間西へ進み、鉢伏山の頂上にたどり着いたときはすっかり陽も落ち 星空の下での登頂となった。ここより鉢高原を下り、今日の宿泊先のHYH"万両"まで40〜50分の下 り道となることを頭にえがきつつ進んでいると、ふもとの方に小さな明かりがこちらに向かってちかずくの に気がつく。やがてその明かりと合流するや"万両"のあるじのおじいちゃんであった。「少し遅いので道 が判りにくいだろうと心配して、迎えに登ってきたよ。」とにこにこしながら出迎えてくださった。"万両 "には2度お世話になったことがあるが、いつもかわらない温かなもてなしに心より感謝の気持ちがにじみ でる。3日ぶりに入る湯槽のなかで心の洗濯をしたような気分にしばしの時間をのんびりと過ごさせてもら うことができた。

■ 7月28日(火) 晴れ

今日も一日快晴が約束されたような朝を迎えての出発となる。一夜のお礼を言い、八木川を渡り氷の山東 尾根に取りつく。夏場の東尾根はきついとはきいていたが、風にも恵まれずひたすら黙々と頂上を目指して 進んでゆく。千本杉、小千本杉の樹林を越え、やがて氷の山頂上に着くころには太陽も真上にきており、か んかん照りつけてくる。県下の最高峰"氷の山"も夏場は熊笹がむんむんと茂り、我々の背丈を越す高さで 生い茂っている。笹の根元は雪の重みで根曲がりし、みな湾曲にのびている。ぶなの木の枝2 3mの高さ のところにくくりつけられたバケツをみつけ、スキ−シ−ズンのトイレやごみ捨て場になっていると聞かさ れ、この辺りは3m前後の積雪になることがうかがいしれる。  頂上一等三角点の道標のある場所で小休止のあと、横行部落への下り道へ足を進める。静かな樹林帯のな かを進むうちやがて木馬道となり、渓流のここちよいせせらぎの音にせきたてられながら、横行部落へと下 ってゆく。  14時頃に横行部落につくや、村の人々が迎えてくださり公民館へ案内される。隣の民家の入浴の接待を 気持ち良くいただき婦人部の方々の心からの盛り沢山な御馳走にすっかり感激した一夜を過ごすことが出来 たことは、HYH事務局からの依頼が徹底していたものだろうと感謝する。夕食後は、地元の青年団の方々 との懇親会がもたれ、我々はひたすら自然に囲まれての生活に憧れを抱くことを強調するが、彼らにはまた 別の思いで今の生活と葛藤していることを聞くにつけ、本当の幸せは一概にはきめつけ難いものであること であると妥協した結末となる。

■ 7月29日(水) 晴れ

一夜のお世話をいただいた地元の皆さんにお礼を言い、次の目的地、音水湖の長源寺ユ−スホステルに向 かう。今日の行程はさほどきつくもなく、距離的にものんびり歩ける距離である。栗の下から若杉を通り、 再び山道に入る。峠という雰囲気がピッタリの若杉峠で快い休憩をとる。  若杉峠からは下りとなり、足も軽やかとなる。やがて国道29号線にでる。時折通るトラックの砂煙に悩 まされながら、昼過ぎに長源寺ユ−スホステルに到着する。  夕食後は、ペアレントでもある住職さんから、人生訓の講和を聞かせてくださったが、さすが話もうまく 皆真剣に聞きいっていた。

■ 7月30日(木) 晴れ

  

今日は3日目、キャンプの日を含めると6日目になる。縦走にはいってからは、おかげさまで毎夜風呂に もはいれるため、疲れもさほどではない。  今日の目的地は、南光町の北端に位置する名高い瑠璃寺である。音水湖は人造の多目的ダム湖である。 連日晴天がつづき、麦わら帽子が放されない。国道29号線を南に進み波賀町までゆく。こっからはやや広 い山道にはいり、千種町へのコ−スをたどる。途中山林を伐採しているところがあったりすると、我々自然 派の人間にとってはやはり寂しい思いがこみあげてくる。朝作っていただいたおむすびの昼弁当を木陰でほ おばりながら、多くの人達にサポ−トをしてもらいながらの縦走に感謝しつつ充実感を肌に感じる。  南光町と千種町の境に近い瑠璃寺は、大きな杉並木の奥にどっしりとしたたたずまいで建てられている。 今回の兵庫ユ−スホステル主催の縦走も、ここまでである。メンバ−は皆初対面の集まりであったが、前半 の神鍋での大キャンプがすでに我々の心をひとつにつなげてくれたものと言えよう。  夕食後は、ペアレントでもある住職にもはいってもらって、いろいろな話に花を咲かせる。

■ 7月31日(金) 晴れ

今日は、ここからは姫路までバスを利用しての最後のコ−スである。充実した一夜を過ごさせていただい たお礼を言い、瑠璃寺を後にする。楽しかったキャンプの生活、日が暮れてもたどり着かない縦走1日目の 鉢高原で"万両"のおじいちゃんが灯をともして、鉢高原まで迎えに来てくださったこと、氷の山を越え横 行の婦人部や青年団のみなさんの心温まるもてなしをしてくださったこと、永源寺や瑠璃寺のペアレントの 有意義な講和、メンバ−を最後まで怪我もなくリ−ドしていただいたリ−ダ−、今回の縦走に際し、宿泊先 のユ−スホステルはじめ、いろいろお世話くださった兵庫県ユ−スホステル協会事務局の戸田さん、参加を 前にアドバイスをいただいた職場の秋山先輩、いろいろな思いの光景が消えては写り、参加してよかったと しみじみ満足感がこみ上げてくる。  姫路で、互いの今後の活躍を誓い、今回の山行の締めとする。  いろいろご援助、ご協力くださったみなさん、本当にありがとうございました。

シリーズ目次に戻る
ホームページに戻る