仲間と登った想いでの山々

北アルプス大滝・蝶が岳から穂高連峰を経て徳本峠越え

と き昭和36年8月11日(金)〜8月16日(水)
コ−ス
神戸=木曽福島=上高地〜徳沢〜大滝山〜蝶が岳〜横尾〜涸沢〜ザイテングラード〜奥穂高岳〜前穂高岳〜上高地〜徳沢〜徳本峠〜新島々=松本=神戸

メンバー弘田さん、南さん、松永さん、菅田

登山のあらまし
(ちょっと写真が古くて良くないなあ・・・40年ほど前のものだから仕方ないか)


8月12日(木) 快晴

全席自由の登山者用夜行列車”準急ちくま”の座席が確保できず、車内の通路でごろ寝の一夜を過ごし、 薄暗い早朝に木曽福島駅に着きバスの始発を待つ。4時30分始発のバスに乗り上高地に向かう。夜行の疲 れでほとんど眠ってしまう。釜トンネルを抜け、3時間余りの後7時50分に上高地着。  五千尺旅館にて朝食を済ませ、賑やかな河童橋で岳沢をバックに写真をとり、すぐに徳沢へ足を進め る。30分も進めば上高地や小梨平のキャンプ場の喧騒から開放され、梓川左岸の平坦な静かな道を散 歩気分で歩ける。 明神あたりからは、左手に樹林野間から明神岳の岸壁が見え隠れしながら眺められ る。視界がひらけると徳沢だ。ひと休みし、これより大滝山への登りにかかる。国土地理院発行の5万 分の1地形図によると、ここからは長塀山の南の谷沿いにつけられた道を忠実に登って行くようになっ ている。  このコ−スはあまり利用されないのか人に会うこともほとんど無く、静かな山旅が楽しめるコ−スで ある。今回は最も天候の安定する時期だけに、かんかん照りの入山となる。次第に高度もあがり、谷筋 から離れると、途端に水が恋しくなってくる。汗をかきかき樹林帯を登るうち、チョロチョロと湧き出 る水場にたどりつく。そばに"長命水"と書かれた木札があり、何となくありがたい恵みの水のような 気分で喉をうるおす。  さらに登ってゆくうちダケカンバが現れ、眺望がきくようになる。穂高連峰の眺めが素晴らしい。 上高地をスタ−トしてから約6時間30分、午後4時30分に大滝小屋に到着。  初めての山小屋泊まりであり、満天の星空と、穂高連峰のシルエットを夢枕に眠りにつく。



徳沢迄入れば左手に明神岳東面の岩場が現れ、・・・・
 徳沢付近から見た明神岳東面の岩場


8月13日(金) 快晴


5時30分起床、朝食を済ませ6時05分、一夜のお世話になった大滝小屋を後にし、今日の目的地 奥穂高へ向け出発する。蝶が岳までは小さなこぶ状のピ−クを何度か越えながら、槍、穂高の眺めの素 晴らしい展望コ−スをのんびり進む。時々可憐な高山植物の花が競うように咲いており、目を楽しませ てくれる。やがて尾根筋はハイマツ帯となって蝶ガ岳ヒュッテに登りつく。頂上南30分ばかりのとこ ろで、小屋は3昭和35年に建てられた新しいシッカリしたものである。  蝶ガ岳とは晩春のころ、松本平方面からこの山を見ると、残雪が蝶の形のように見えるのでこの名が 付いたといわれている。ピ−クの往復には約1時間かかるため、本日の行動時間を考えパス。  昨日5時間以上もかけて登ってきたこの高さから、ほとんど真っ直ぐに標高1600mの横尾へ標高 差1000mをぐんぐん下り、午後からはふたたび3100mの穂高岳山荘まで登らなければならない ことを思うと、我ながらきつい計画をたてたものだと感心する。2時間の下りのすえ横尾につく。横尾 山荘の前で梓川を渡り、横尾谷の左岸につけられた樹林帯の道をたどってゆく。前方左手にそびえ立つ 屏風岩の岸壁を眺めながら平坦に近い良く踏まれた道を黙々と進む。沢に沿って登ってきた道も橋を渡 り右岸に移る。次第に傾斜もでてきてつらい登りになる。 やがて行く手に涸沢の雪渓が見えはじめ、 色とりどりのテントが点在しているのが見えてくる。 このテント場は、涸沢カ−ルの底になり、稜線からの残雪がビッシリと埋まっている。やや台地状にな っているところに建つ涸沢ヒュッテ、北穂の裾野に建つ涸沢小屋の前を通り、ザイテングラ−ドの取り 付き点に着く。少し疲れも出てきたが今日の最もきつい登りが待ちうけていると思うと弱音を吐くわけ にはいかない。行動食で鋭気を養い見上げるばかりの登りにとりかかる。ザイテングラ−ドの登り道は 急だがよく踏まれており、歩きにくいところはない。ただひたすら登りつめてゆくのであるが、急登だ けに高度はたちまちのうちに上がってゆく。すぐ下までせりあがっている雪渓を眺めながら休み休み登 りつめてゆくと、やがて穂高岳山荘が現れてきて、道は左へ巻くように進み、白出沢乗越に建つ小屋に 17時30分たどりつく。  今日は10時間以上のしかも1000mを越す標高差の下り、登りであったがたどり着いてしまえば 満足感で疲れも半減する思いである。夕陽に照らされた大滝山、蝶ガ岳の眺めが美しい。


8月14日(土)快晴


早朝の4時20分起床、朝食の前に涸沢岳の頂上を往復すべく空身で出掛ける。眠い目をこすりなが ら35分の登りで3103mのピ−クに立つ。厳粛なご来光を迎え小屋に戻り、朝食を済ませ7時30 分穂高岳山荘を出発する。小屋を出ていきなりの登りも今までのような道ではなく、ところどころに鎖 が固定されている岩肌を両手もつかいながら登ってゆく。ル−トを示す白ペンキの目印を忠実にたどり 、落石は絶対におこさないように慎重に登ってゆく。およそ半時間の登りのすえ、北アルプスの最高峰 であり。我が国では富士山、北岳に次ぐ第三位3190mの岩峰奥穂高岳頂上にたどりつく。頂上はあ まり広くなく大きなケルンと小社がまつられている。ジャンダルム飛騨尾根にドッカと立ちはだかるジ ャンダルムの姿をまのあたりにした今、その迫力に圧倒される思いである。ここからの展望は素晴らし く、槍ガ岳はもちろん、そのはるか奥に白馬・剣岳が見られ、南に御岳・西に遠くは中央アルプス・南 アルプスも眺められ、360度の眺望に大満足のひとときを過ごす。  右手にのびる急峻な西穂高への岩稜を見送り、前穂高岳へつづく吊り尾根に下ってゆく。道はほとん ど岳沢側につけられており、とくに危険なところもなく最低コルから重太郎新道を経て西穂へ向かう。  行く手にはこれから登る西穂高のピ−クがゴツゴツした感じで聳立している。岳沢へ下る道との分岐 点に荷物をデポし、空身で西穂高の頂上に向かう。大きなゴツゴツした岩の上を白ペンキをたどって頂 上に着く。3090m,奥穂高に高さを100mゆずっているものの、ここからの眺めも素晴らしく、 特に奥穂高の眺望は迫力がある。  頂上からの下り道を間違え、15分ばかり奥穂への稜線を下ってゆき、コ−スの悪さに間違いに気付 き引き返す。デポ地点から岳沢へは途端に急な下りとなる。時々針金が固定されているが、さほど危険 なところもない。しかし、かなり膝や足もくたびれてきており、気を抜くことなく慎重に下ってゆく。  広い岳沢のガラ場をトラバ−スすれば小高いところに建つ岳沢ヒュッテに着く。ここからは樹林の中 につけられたしっかりした道を下り梓川沿いの道に降り着く。  ここで行動を共にしてきた弘田、南、松永の三君と別れ再び徳沢へ向かい村営徳沢ロッジに入り、職 場のパ−ティと合流する。時に17時50分、今日は実に12時間強の行動時間であった。また、別の コ−スから下山された秋山氏ともここで合流。



8月15日(日) 晴れ

7時35分ロッジ発、徳沢から明神に引き返し徳本峠へ向かう。職場のみんなは、旅行できており少 々きついコ−スとなり、バテバテの女性もいたが10時20分徳本峠に着き大休止。松本から上高地ま での3時間のバスがよほどこたえたらしく、少々歩いてもよいからここから島々へのコ−スと決定。  休み休み登ったがやはり山登りの経験がない人にとってはつらい登りだったようだ。バスもつらいが 山道もきつい。峠で1時間50分休憩し、島々谷南沢へ下ってゆく。すぐに大粒の雨が降ってくる。今は利用 する人もめっきり少なくなったと言われているだけに、静かな山道である。岩魚留 小屋あたりで、一度大きな雷鳴にあい驚いたが雨は止む。  長い長い沢道を黙々と進みやがて広い道に出るがこのあたりは地図からもすでに外れており、村の名 前もはっきりしないまま、疲れがどっと湧いて来る感じをおさえながらバス停を探す。  島々宿のバス停を見つけ19時乗車。かなり疲れた身体に気合を入れながらバスに乗り、松本の 駅前で夕食をとり夜行列車で神戸に向かう。

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