仲間と登った想いでの山々

八つ岳


と き昭和37年5月3日(木)〜5月7日(月)
コ−ス
神戸=茅野=美濃戸〜柳沢北沢〜赤岳鉱泉〜中岳〜阿弥陀岳往復〜赤岳〜横岳〜硫黄岳〜赤岳鉱泉〜美濃戸=茅野=神戸
メンバー大坪、菅田
赤岳から権現岳横岳から赤岳


行 動 記 録

八が岳は長野県と山梨県の県境に位置し、広大な裾野をもつ山塊である。山全体としては、こじんまりとまとまっているが、その容姿は魅力あふれる形で我々を引きつけてきたといえよう。今回計画したのもその魅力に誘われてのことである。  八が岳は夏沢峠を境にして、北八が岳と八が岳に分かれるが、今回は八が岳のおもだった峰々の縦走を行った。  >■ 5月3日(木) 晴れ

国鉄神戸駅待合室に18時45分に待ち合わせ、大阪20時00分発の"準急ひえい8号"に乗り、名古屋で23時10分発の"準急おんたけ"に乗り継ぎ出発する。

■ 5月4日(金) 晴れ

茅野駅に6時31分降り立つ。軽く朝飯を済ませ美濃戸行きのバスに乗車。八つが岳の山麓に広がる高原をのんびりと揺られながら約1時間で八つが岳農場に到着。偶然出会った隣の職場の津久井氏、岡本さん(このお二人は後に結婚)と前後しながら美濃戸へ向かう。  しばらくは広い道がつづき、やがて柳川の流れの音に迎えられながら、少しづつ高度をあげてゆく。行く手には目的のピ−クのひとつである阿弥陀岳の雄姿がますます近くなってくる。高原状のなだらかな道をなおすすみ、農場から約2時間で美濃戸に着く。  道の左手に美濃戸山荘があり、ひと休みする。 ここから柳川北沢に入り赤岳鉱泉に向かう。津久井氏達は南沢から行者小屋へのコ−スをたどられた模様。  一部細くなっているところもあるが、幅1mくらいの判りやすい道である。やがて目の前に横岳西壁の偉観に思わず目をみはる。  沢とはいえ水量は多くなく、静かな樹林の中をゆっくり進む。夜行列車での入山はどうしても睡眠不足になりがちだが、今回のように名古屋での乗り継ぎのときは、さらにくたびれる。途中、昼食の行動食をとりながら15時過ぎに赤岳鉱泉のテント場に到着する。  赤岳鉱泉も今では湧き湯もないらしく、山小屋として運営されている模様。小屋の近くのテントサイトにBCを設営し落ちつく。

■ 5月5日(土) 晴れ

5時起床、温かい朝食を済まテントを飛び出す。心配していた天候も大丈夫の様子に気をよくして出発する。  残雪もすでに消えている樹林帯の中、横岳から西にのびる支稜の尾根を越え、行者小屋にさしかかるあたりからは、左手に横岳の岸壁を眺め、中岳・阿弥陀岳間のコルへ向かう登り道にさしかかるあたりからは、阿弥陀岳が眼前にせまり、我々の行く手をにらみつけるがごとくそそり立っている。  コルにザックをデポし、アイゼン、ピッケル、水筒を持って阿弥陀岳を往復する。阿弥陀岳の頂上から見る赤岳、横岳の残雪を擁した荒々しい稜線は迫力があり、飽きのこない景観である。  コルからふたたび荷を背負い、ゆるやかなピ−クの中岳を越え赤岳の急峻な登りに取りつく。鎖のつけられた岩場を慎重に登り、2899mの赤岳頂上に立つ。さきほど登ってきた阿弥陀岳が重々しくも素晴らしい姿で対座している。  南には、キレットを挟んで権現岳が、北にはこれから進む横岳の岩稜が連なっており、東面のなだらかな斜面に反し、西面の岸壁は対象的である。これは噴火のあとの自然現象とのこと。自然の持つエネルギ−の大きさにあらためて敬服させられる。  主峰赤岳からの景観をカメラに収め、ところどころ針金や鎖が固定されている急な岩場を慎重に下降する。横岳との間のコルに建つ赤岳石室、山渓石室もこの時期はまだ営業しておらず、立ち寄らずに通過する。  予定としては、ここから行者小屋へ下ることとしていたが、時間的にも余裕があることや、天候も安定していることより判断し、横岳〜硫黄岳から赤岳鉱泉のテント場に足を延ばすこととする。  横岳は七つの峰頭をもつ細長い岩稜の山で、ここの縦走路にもいくつかの鎖場がある。道はほとんどが作久側(西側)に巻き道があり、ピ−クを踏むのは最後の主峰2830mの頂上となる。このあたりから振り向いて眺める赤岳の眺めはまた格別である。八つが岳連峰の主峰にふさわしく、その偉容は堂々とし、盟主赤岳の名に恥じない風格で鎮座し、我々の目に焼きついてはなれない。  横岳からは、いままでの悪場は無い。むしろ硫黄岳頂上周辺はおわんを伏せたような、なだらかなところだ。2〜3m程もある大きなケルンが点々と立っているが、方向性がなく濃霧など視界のきかない時などは、迷いやすい地形といえよう。  横岳から眺めた赤岳、硫黄岳とはまた違った眺めを味わいながら、今回の山行への満足感を噛みしめ、赤岳鉱泉への下り道に入る。

■ 5月6日(日) 晴れ

 

 今回のコ−スは、まだ未熟な自分たちの計画として、入下山日を除き2日間をかけて縦走する予定であったが、条件に恵まれ一日で縦走することができたため、今日は下山日となった。成果を胸に無事下山できることと、快適に過ごさせてくれたこのテントサイトに感謝しながら、入山してきた柳川北沢を下り、八が岳農場からバスの人となり、帰神の途につく。

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