仲間と登った想いでの山々

昭和37年夏山合宿(A隊) 北アルプス剣岳〜阿曾原縦走


と き昭和37年8月4日(土)〜8月9日(木)
コ−ス
神戸= =神戸
メンバー(CL)菅田、(SL)森、大川、藤井、松永、織田、島津、中塚、小椋、小西、菊地

登山のあらまし


なにせ40年近く前の写真のためいいものなし。

入山2日目、曇り空の中剣岳の登頂を果たした頃から雨に見舞われ、長次郎雪渓を下り終える頃はには”土砂降り”となる。苦労しながら長次郎雪渓を下りきり剣沢雪渓合流地点につく。 小屋へはここから剣沢雪渓を少し登り、この頃は不充分な雨具に身体の真底から冷え込みガタガタふるえながら着替えを済ませほっとする。

長次郎雪渓を下りきり剣沢を登る



途中、平蔵尾根から落ち込む枝沢にはどれも万年雪が詰まっていた。
急峻な平蔵雪渓の望む



下山コースは剣沢を下り、二股出合いから三の窓雪渓を少し登り、 池の平小屋で途中泊。ここから阿曾原へ下り、関電のご好意でトロッコに乗車させていただき欅平へ出る。
二股付近のこころもとない吊り橋



池の平のテント場



池の平からの八峰岩稜


行 動 記 録

今回の剣岳夏山合宿は、室堂から入山し剣本峰登攀の後、剣沢から池の平を経て宇名月へ縦走するA 隊と、馬場島から入山し、池の谷にベ−スキャンプを張り、裏側三の窓から剣本峰の登攀及び、剣尾根 第五ルンゼの岩登りを目指すB隊に分かれての合宿となり、ここではA隊の記録を記す。

■ 8月4日(土) 晴れ

20時10分大阪発の急行夜行列車にてB隊の後藤、清水、弘田、南、島倉、笹西の6名と乗車、賑 やかに富山へ向かう。

■ 8月5日(日)快晴 

富山から乗る富山地鉄はB隊とは路線が異なるため、我々はひと足に千寿が原行に乗車。ケ−ブル乗 り場にて長蛇の列に加わり待つこと1時間、材木坂をケ−ブルで上がる。昔はこの急坂を歩いて登って いたのかと思うと今は楽なものである。「材木を突き刺したような石が多く見られるところより、材木 坂と呼ばれるようになった」とガイド嬢が案内してくれる。  美女平にてザックの重量測定があり、重さに応じて荷物代がバス代に加算され、弥陀ガ原までのバス に乗る。年々開発が進んでいるこの辺りは、ブルド−ザ−の音がうるさくあまり気分の良いものではな い。やがて車窓から剣岳、大日岳の稜線が見えはじめるが、剣の荒々しい山容にくらべ、大日岳は広大 な稜線であり、対照的な姿で目に飛び込んでくる。弥陀ガ原でバスを降り、カンカン照りのなか天狗平 を経て室堂から雷鳥沢取り付き点の川原で一息入れる。カラカラに渇いた喉に、冷たい沢水で溶かした 粉末ジュ−スが実にうまい。行動食とキュウリをかじりながら、これから登る雷鳥沢を見上げていると つい休憩も長くなりがちである。  沢に取りつきすぐに右手の広い尾根をジグザグに喘ぎながら登り詰めると別山乗越である。ひときわ 近くなった剣の雄姿に明日の登頂をいい聞かせながら今日の泊まりとなる剣沢小屋に入る。一応ハガキ で連絡はしていたが最盛期の混雑は予想以上、B隊のテントを恨めしく思いながらギュウギュウ詰めの 一夜となる。

■ 8月6日(月)曇りのと雨 

昨日はあれだけ快晴だったのに今日は天候は下り坂のようだ。ごったがえすような小屋での朝食を済 ませ、アタック装備だけをサブザックに詰め6時30分に剣沢小屋を出発する。1時間の登りで一服剣 を通過、さらに約半時間の登りで前剣に着く。ここから眺める剣本峰は迫力があり、ほとんど草木も無 く岸壁と岩稜の連続である。天候はさらに下りガスが出始め視界も途切れ気味になってくる。この辺り から鎖場も現れ先行パ−ティとの間も無くなり行列や時間待ちが続く。登りと下りのル−トが別々につ けてあるところはまだよいが、そうでないところは巻き道も無く登り、下りの者が適当に交互に進むこ ととなり、我々のように人数の多いいパ−ティはどうも不利である。垂直に近い壁や"かにの横ばい" と呼ばれる1枚岩のトラバ−スを、埋め込まれた鉄棒や鎖を使い慎重に通過し、9時50 分に剣岳頂上に立つ。残念ながらガスが一面にかかり何も見えない。  反対側の池の谷BCから登ってくるB隊とここで12時にデ−トをすることになっており、時間もあ るのでコンロとコッフェルを出し紅茶とホットジュ−スをつくる。昨日とちがい止まっているとかなり 寒い。ここではホットジュ−スが大変うまい。そのうち10時半頃よりとうとう雨が降りだしてきて、 楽しみにしていたデ−トを諦め下降することにする。ガスっているが濡れた岩と混雑するあの鎖場を考 えれば、予定どおり長次郎雪渓をゆっくり下ることとする。全員アイゼンをつけ、下り出したのはよい が、半時間程下ったところで前から4人目にいた織田がスリップし、前の二人を巻き添えにして滑りだ す。「スリップ!」の声に振り向くや驚いてピッケルを突き刺しだんごになって滑ってくる三人の身体 を脚で挟んでなんとかくい止める。咄嗟の出来事で、視界のきかないこの急な雪渓を止まらなかったら と思うと冷や汗がでる。  雨が一段と激しくなり、慎重に一歩一歩下ってきたので、剣沢出会までは時間が予想以上にかかって しまった。立ち止まると寒くて歯がカタカタ鳴りじっとしておれない。広い剣沢を登り剣沢小屋に15 時40分帰り着く。全員着替えを済ませ部屋に落ち着いた時は、青い唇も生気を取り戻しほっとする。

■ 8月7日(火)晴れのち曇り 

相当大降りだった昨夜の雨も上がり、雨に現れた緑がとても美しい快適な夏山日和となる。昨日のこ ともあるので、一応全員アイゼンをつけて剣沢を下降し苦労して下った長次郎雪渓の出会いに着く。こ の辺りより陽射しが増し我々を照りつける。例年より残雪の量は少ないらしく、雪渓が薄くなり危険な ため山腹の夏道を歩くようにする。今日の行程は池の平までのため雪渓の状況が悪くなければコ−スと しては危険なところは少なく、みんな気持ちにゆとりもありのんびりと二股に到着。  紅茶を沸かし行動食をパクツク。近くの川原で4〜5人のパ−ティが頭くらいのスイカを冷しにかか っているのを横目でチラチラ眺め、なんでこんな所までと思いながらも美味いだろうとヤケテくる。  「栄養第一」となかばやせ我慢のことばを口にしながら、こちらは仕方なく梅干しを出し配ってほう ばる。腹ごしらえも済ませ、北股への登りにかかる。途中三の窓雪渓や小窓雪渓の出会いから見上げる 雪渓上部はガスって見えないが、両側の壁がそそり立っており、どちらも暗いイメ−ジの強い沢筋であ る。池の平への小さな尾根を一気に登り、池の平の池の畔で一服。静かなのんびりとしたテントサイト で、数張りのテントが張ってあった。ここから池の平の小屋まではすぐである。  小屋に荷を置き、池の平山へ登りにかかったが、雨がポツポツしはじめたので途中の小雪渓でグリセ −ドの練習などをして小屋に戻る。小雨はすぐに止んだが、ガスが出てきて八つ峰方面も見えず残念で あった。今までの剣沢小屋の超満員の小屋とは違い、静かな山小屋らしい雰囲気の味わえる一夜となっ た。

■ 8月8日(水)曇りのち晴れ 

  

うすくガスのたちこめる池の平を7時丁度に出発。1ピッチ歩いたところで仙人池に着く。此処から の剣岳八つ峰の日本ばなれした素晴らしい眺望を期待していたが、あいにくガスのベ−ルで包まれ全然 見えない。残念!。淡々とした森林の中を阿曽原に急ぐ。  阿曾原からは、森氏のつてで紹介状を用意していたので、関西電力の黒部工事用トロッコに快く乗せ ていただくことが出来た。一般の登山者も利用できる便はあるらしく、発車時刻が表示してあった。 (このトロッコはその後一般登山者の利用はできなくなり3時間かけて徒歩下山)岩盤もむきだしであ ろう真っ暗なトンネルのなかをゴ−!とかなりのスピ−ドでくだっているようだ。それでも勾配がおい つかず途中で一旦下車し、エレベ−タで200m下降、下のトロッコに乗り継ぐや再びゴ−ゴ−と走り だす。迫力満天!。おかげさまで約20分くらいで欅平に午後1時過ぎに到着することができた。  欅平からは、やはり関電の工事用トロッコで宇名月温泉に向かう。このトロッコは工事が終われば観 光トロッコになるとのことであるが、現在はまだ工事用が優先である。200円の乗車券を買い乗らせ ていただいたが、キップには「生命の保証はいたしません」との表示に、工事用であることがしっかり 表されている感じである。山腹をくり抜いた10数カ所のトンネル、両岸そびえ立つ谷間に掛かる高い 鉄橋を何度も渡り、やがて湯煙立つ宇名月温泉に着く。  富山では夜行列車の時間までを、銭湯に入り、ゆっくり夕食をとり、今回の山行を気持ち良く終える ことができた。

■ 8月9日(木) 晴れ 

  

早朝に大阪駅着。一旦帰宅後出勤。 今回の山行ではいくつかの反省点も認められる。今後の山行への参考としたい。  ・基礎的雪上訓練の習熟  ・雨具の完全準備  ・時間配分の見直し 休憩のタイミングと休憩時間の長さ等 いずれにしろ、部の初めての夏山合宿であり、まだまだ未熟な点が目立つ山行であった。

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