仲間と登った想いでの山々

昭和37年冬山合宿 中央アルプス木曽駒が岳


登山のあらまし


1回目の偵察登山が雨天のため6合目小屋から動けずに引き返したため、2回目の偵察登山を決行。木曽駒道から頂上を目指す。 途中、4合目付近から振りかえり眺めれば木曽谷を隔てて聳え立つ独立峰の木曽御岳がでんと座っていた。

4合目付近



木曽御岳もすっかり雪化粧。
木曽谷を隔てて見る御岳



9合目玉の窪付近から見上げる麦草岳。このあたりは冬山合宿本番では雪崩の危険性が大きく、麦草岳稜線を利用することになろう。
朝日に照らせれる麦草岳の稜線



玉の窪からは雪面の凍結もきつく、表面の雪のすぐ下は鏡のような氷。 まるで氷の斜面を登るようにアイゼンの詰めをきかせて慎重に登る。スリップすればなかな止まらないかもしれない。
頂上直下の急な雪面



木曽駒が岳頂上からは宝剣岳のピークに向かう。途中の広々とした稜線は今日のように晴れていれば気持が良いが、 荒天で視界がなくなるとコースの見極めに苦労しそうなコースとなろう。
広々とした頂上稜線でのんびり休憩


行 動 記 録

新生山岳部初めての冬山合宿であり、慎重を期するため二度の偵察登山を行ったうえでの冬山合宿となった。 ここにその概要を記す。

偵察登山(1回目)メンバー(L)秋山、菅田、弘田、南、島倉、小西、田村

■ 11月2日(金) 曇り

男子部員4名、女子部員2名で11月2日夜行列車準急"ちくま"に乗り快い緊張感にしたりながら大阪を出発する。

■ 11月3日(土) 曇りのち雨

早朝に木曽福島駅に着き朝食を済ませタクシ−2台で駒の湯へ向かう。駒の湯を少し過ぎたところで下車、大きなキスリングザックをかついで歩きはじめるが夜行の疲れで足取りは重い。三合目辺りから傾斜も増し、四号目から赤林山を巻き更に高度を上げてゆくが非常に辛い登りとなる。  まだこの時期はこの辺りには雪はついていないが、本番の合宿時にはかなりきつい登りとなりそうなところである。登りはじめてから約5時間で六合目避難小屋の前に着く。男子はかなりバテバテの様子だが、女子2名は元気なものである。今日の予定はここまでであり小屋の前にテントを張り落ち着く。  この避難小屋はかなり古くくたびれているが、本当に避難しなければならない時には有り難いものとなろう。夕方より雨まじりの風が激しくなり、我々のテントに降りつけてくる。森林限界内であるここは風の辺り具合はさほどではないが、風に叩きつけられる木々のきしみや、ザアザアゆれる音が強く耳ざわりである。ここには水が無く往復40分ほどの水場まで汲みに行くことになる。夕食後明日の回復を願って就寝。

■ 11月4日(日) 雨

期待は外れ雨は雪に変わり、雪化粧の山肌は凍てつきすっかり冬の気取りで我々を迎える。装備の点からも無理の出来る備えではなく、これ以上偵察の目的もままならぬと判断、早めに撤収し下山することとなった。  くやしい思いを胸に駒の湯へ。駒の湯温泉で身体を温め帰路につく。

■ 11月5日(月) 曇り

夜行列車で大阪着、帰宅後出勤。  偵察登山(2回目)メンバー (L)弘田、菅田、南

■ 11月22日(木) 晴れ

大阪をやはり夜行列車で出発。11月初めの偵察登山が天候悪化で目的を果たすことが出来なかったので、改めて3名による二回目の偵察登山を行った。

■ 11月23日(金) 晴れ

木曽福島駅からタクシ−で駒の湯へ。ここ20日間の差は大きく、直ぐに雪のついた山道の登りとなる。今回はテントを持たず六合目の避難小屋を利用することとしたため、肩の荷も少しは軽い。  六合目までは二度目のル−トであるがやはりきつい。避難小屋に入り明日の頂上へ備える。

   ■ 11月24日(土) 晴れ

昨夜雪からとかして作っておいたポリタンクの水もカチカチに凍っており、あらためて小屋の外から雪を取り込み水作りから始める。コッフェルに山盛り積み上げた雪も溶けてしまえばわずかなもの、何度も継ぎ足しながら朝食用と行動中の紅茶の水を確保する。  幸い今日は天候も安定しているようだ。ここからの雪上ル−トに備えアイゼン、ピッケルをはじめ身支度をととのえ出発する。左手の道を水平に進み七合目からは再び登りとなる。右手は麦草岳の斜面が迫っており多雪期には雪崩の危険性もあるようだ。しばらく行くと斜面は広くなり前が開けてくる。  この斜面は降り積もった雪が凍結し、スケ−トリンクを斜面にしたような状態となっており、アイゼンをきかせ慎重に登り玉の窪の稜線に着く。視界のきいた稜線を快適に進み駒が岳頂上に立つ。頂上には駒が岳神社の祠があり、石垣も鳥居も風雪に叩かれてコチコチの雪のひれとなったいわゆる"エビのしっぽ"がきれいに付着し見事な造形美をかもしだしている。さらに足を延ばし広い稜線のゆるやかな起伏を越え大きな岩のピ−クの宝剣岳に着く。  合宿本番での計画はこのピ−クまでとしており、ここから玉の窪まで引き返す。玉の窪からは合宿時のコ−スである木曽前岳、麦草岳の稜線づたいに下降する。途中一か所ギャップがあり少してこずるがなんとか通過、六合目の小屋に帰着。テンの毛皮の尻当てを落としてきたのに気付くがあとのまつり、あきらめる。

■ 11月25日(日) 晴れ

偵察の目的もほぼ達成されたとして下山、帰神する。

冬山合宿本番 メンバー(CL)後藤(SL)秋山、菅田、弘田、南、笹西、島倉

■ 12月29日(土) 曇り

いよいよ冬山合宿本番である。大きなザックをかつぎ皆それぞれ山行きの格好をして出勤、定時後の出発にそなえる。  大阪駅から夜行の臨時急行"さいうん"に乗り込み出発。多くの山屋で賑わう車内、なかなか眠れそうにない。

■ 12月30日(日) 曇りのちみぞれ

早朝の木曽福島駅から今回もタクシ−をひろい駒の湯へ向かう。タクシ−の運転手に「気をつけて」「頑張って」との声に見送られて入山。歩きだしてすぐに小雨がパラパラ降ってくる。いやな思いでヤッケを着込み黙々と前進するが高度が増すにつれ小雨はやがてみぞれに変わってゆく。肩の荷が気のせいからかますます重たくなってくる。このあたりの積雪はまだ30Cm程度と少ないが時折スリップし、よろけながら一歩一歩前進する。みぞれは雪に変わることもなく一層激しくなり意気消沈、止むなく四合目で今日の行動を終えることとし、テントを張る。

■ 12月31日(月) 風雪

天候はさらに悪くなっている模様。あまりじたばたせずテントを撤収し、六合目に向かう。この天候では上は吹雪だろうと予想しながら六合目でテントを設営、天候の回復を待つこととする。

■ 昭和38年1月1日(火) 風雪

初めて迎える雪山での新年、だが天候は期待を裏切り今日も良くない。予定ではさらにテントを上に上げ、麦草岳に進めることとしていたが、この天候ではその先の行動が難しいことよりテントを残し、麦草岳駒石付近まで登ってみることとし、十分な身支度で出発する。  駒石手前の森林限界をでるや途端に風雪は強くなり行く手を阻まれる。森林内でしばらく待機したがおさまりそうにもないためここから引き返す。

■ 1月2日(水) 風雪

今日も天候はよくないようだ。今日もテントはそのまま残し駒石へ向かう。昨日は駒石手前の森林限界から引き返したが、今日はさらにもう少し進み駒石の上部までゆき、次回のチャンスのときのアタックキャンプ地として使えることを確認して引き返す。

■ 1月3日(木) 曇り

今回の冬山合宿は天候に恵まれないらしくあきらめて下山。"また来年"と気を取り直し夜行列車にて帰路につく。

■ 1月4日(金) 曇り

早朝に大阪着、解散。

シリーズ目次に戻る
ホームページに戻る