仲間と登った想いでの山々

昭和42年夏山合宿 北アルプス薬師峠集結(A隊)

と き昭和42年8月1日(火)〜8月6日(日)
コ−ス
神戸=高山=新穂高温泉〜わさび平〜蒲田川右俣〜大のま乗越〜双六池テント場〜黒部川最源流地点〜ここから2隊の別れ黒部源流を下る〜    兎平テント場〜薬師沢出合いテント場〜薬師沢〜太郎平〜薬師峠テント場で4コース全員集結〜折立=富山=神戸
A隊メンバー(CL)西尾(SL)菅田、後藤、山東、市川、織田、伊藤、橋本、赤松、武士、出雲

登山のあらまし


これも古い写真やなあ〜。
  入山初日の双六池のテント場。きつい登りやったなあ〜。いつも初日はきついからなあ。重いテントも快適なヤカタ・重い食料も   素晴らしい献立の食材。沈み行く西陽にせかされながら夕食の準備だ。うまいものを作って満天の星の下で乾杯しよう・・・!   
双六池のテント場



二日目。双六池テント場から三俣蓮華岳に向かう。このあたりは快適な お花畑の水平道であり、進む足取りも軽やかだ。
さあ出発だ



三俣蓮華岳からの眺めも素晴らしい。天空を突き刺すが如くにそびえたつ”槍が岳” もここからは一層その感が強い。
三俣蓮華岳から槍が岳を望む



黒部川最源流。ここで雲の平経由薬師峠コースと源流下降経由薬師峠コースの2隊に分かれて 進むこととする。
黒部川最源流地点で



黒部川源流の下降は徐々に水量も増し、渡渉も飛び石伝いばかりとはゆかなくなり、ときには股下まで浸かりながら進むこととなる。
黒部川源流の渡渉



源流途中のテント場”兎平”のあたりにはニッコウキスゲがたくさん咲いていた。   

ニッコウキスゲ



入山4日目に”薬師峠”のテント場に4隊が集結。それぞれの隊が踏破してきたコースの話でにぎやかだ。 今夜は盛り上がる合同コンパになりそうだ。
薬師峠テント場に4隊が集結



好転に恵まれた今回の合宿も今日は下山日。それぞれの思いを土産に太郎平から 折立へのコースを下る。
太郎平から折立への下り



おーい待ってくれ〜。 酷使に耐え切れずついに靴のほうが先にダウン!
ありゃ〜



かんかん照りの中をやっと折立に到着。ここからは小型バスで富山へ出て帰神の途につく。
整列!


行 動 記 録

今回の夏山合宿は北アルプス薬師峠を集結キャンプ地と定め、4コ−スに別れての集中踏破を目指しての合宿となった。以下はその時に参加したA隊の行動記録である。

■ 8月1日(火) 晴れ

21時20分、大阪発の列車に乗車、名古屋で高山線に入る列車に乗り継ぐ。名古屋で突然の激しい雷雨に見舞われ、57分遅れで名古屋を出発する。明朝高山駅にトラックで迎えにきていただくこととしている、新穂高温泉の今田館に「高山到着が1時間遅れ、朝6時頃になる」旨の電報を打つ。  出鼻をくじかれたスタ−トとなったが、陽射しのきつかった昼間の積乱雲の置き土産か?

■ 8月2日(水) 晴れ一時夕立

朝6時、高山駅で今田館のトラックに出迎えられ、早速新穂高温泉経由ワサビ平らに向かう。今までにも、剣岳池の谷合宿の時や、この春など何度かトラックのお世話になったが有り難いことだ。  7時丁度に蒲田川左俣のわさび平に着く。トラックもここまでだ。各自持参してきた朝食を木陰でとり出発に備える。このあたりは大きく繁ったブナ・ナラ・ダケカンバなどが枝を重ねるようにして伸びている。新穂高温泉のような賑やかさもなく、野鳥のさえずりと、木の間を吹き抜ける快い風の音にいばしのんびりとしたぜいたくな時間を過ごす。  8時45分、薬師峠集結の地に向けわさび平を出発、縦走のスタ−トをきる。1時間も進めば蒲田川左俣の道ともわかれ、大ノマ乗越への道に入る。木陰の道もなくなり真夏の陽射しで焼きついたような沢筋に、ゴロゴロした石を踏みしめながら黙々と登ってゆく。  女子部員達はなかなか元気のようだ。カンカン照りの広い沢の途中、やっと清水の流れる木陰の水場に着く。緑の絨毯にくるまったような、苔むした岩々水しぶきがリズミカルにふりそそ、みずみずしい光景である。  3年前にここを登ったとき、他のパ−ティがここできゅうりとマヨネ−ズをうまそうに食べていたが、今回は我々もここできゅうりを冷しマヨネ−ズでかぶりつく。 再び強烈な陽射しの中の登りを開始。ところどころに黄色やピンク、オレンジなど色あざやかな可憐な高山植物が咲いているが名前はさっぱり判らない。夜行列車の寝不足がこた、なんとなく足取りもおぼつかない感じだ。誰からとなく「ファイト!」の声があがり、自分自身にそれぞれがハッパをかけているのがうかがえる。振り返れば、穂高の峰々が望める高さまで登ってきているのがせめてもの慰めだ。大ノマ乗越の手前の最後の水場で休憩、バテ気味の身体にカロリ−を補給し元気をつける。 13時20分、大ノマ乗越着。ここから双六小屋のあるテントサイトまでは、快適な樹林帯の水平道となり、高山植物や、コマドリの軽快なさえずりを聞きながら、弓折岳の西斜面を進む。  15時20分、双六池のテントサイトに到着。先ほどから雲ゆきがあやしくなあっていたが、我々の到着を待っていてくれたかのように、激しい雷雨の洗礼を受ける。大あわてでテントを張りもぐり込む。  夕食を終えるころにはすっかり晴れ上がり、明日の好天を約束してくれたように、陽がおちると満点の星空で我々の第一夜を演出してくれた。

■ 8月3日(木) 快晴

4時30分起床、気温8℃。朝食を済ませ、テントを撤収し、全員で出発前のラジオ体操で身体をほぐしたのち、6時5分テント地を出発する。寒いくらいに冷たい朝の風の感触に、夏山の実感を味わいながら双六岳東斜面の水平道を進む。途中小さな沢に流れる水場で小休止。ここでも緑のじゅうたんの上を流れる清水で喉を潤す。水温2.5℃ 冷たい!7〜8秒も手を付けていればちぎれそうになり、とてもそれ以上は付けていられない。  8時30分、三俣蓮華岳頂上直下の分岐点で荷をデポし、頂上を往復する。北アルプスのほぼ中心となるここからの眺望は素晴らしく、槍・穂高連峰、立山連峰・後立山連峰の峰々はもとより、中央アルプス、南アルプスも遠くに望みながらひとときを過ごす。  デポ地点からは、三俣山荘前を通過し黒部の源流に向かう。黒部最源流よりA隊11名の内、後藤、伊藤、菅田の3名は源流沿いに下降し、途中1泊したのち、薬師沢出合いのカベッケの小屋(現在の薬師小屋)で再び合流する計画としているためここで分かれる。A本隊の8名は、ここから雲の平で1泊テントを張り、薬師沢出合で合流後薬師峠へ向かう計画だ。  源流組3名は、足元を登山靴から地下足袋に履き替え、11時に源流下降開始。ときどき刺すように冷たい渡渉を繰り返しながら順調に進み、13時35分祖父谷出合いに着く。  ここで2人のプロ岩魚釣り師に出会い、毛バリで仕事をしているのをしばし観戦。ちょっと小降りではあるがなかなかの手さばきである。『コツ』を聞いてみると、『泳いどるすぐ上に毛バリを投げ込み、食いつく瞬間をタイミングよく引き上げればいいんじゃ」と。『それ!あそこに泳いでおるでよ、そのカミにそれ!。・・・・・』と言われても我々にはさっぱり魚影すら見分けられない。『どこどこ・・・』と言っているうちにヒョイと釣り上げてしまう。『恐れ入りました!』  決して多くは釣らず、予定の数が釣れればさっさと竿をしまってしまう。我々も一応毛バリと糸は持参してきたが、プロの前ではとてもサマになるまい。  すぐ下流の祖母谷出合、五郎沢出合を過ぎ、15時30分今日のキャンプ地の、赤木沢出合に着く。右岸の兎平の台地には、既に1張先客がいるようだ。今夜はおそらく我々の1張りと合わせて2張りだけのキャンプであろう。地図で確認したところでは、このあたりで標高約2000mくらいのようだ。  昭和38年の実業之日本社発行ブル−・ガイドブックス42『雲ノ平』によれば、数年前までは黒部源流にはたくさんの兎が生息していたらしい。ここ『兎平』の名前からもその当時が偲ばれる。  早い夕食を済ませ、しからば・・・と、適当な小枝を探し、釣り糸に毛バリを仕掛け、魚影が濃いと言われている赤木沢出合あたりで挑戦してみる。時間的には喰いにくる時ではあるが、小1時間やってはみたものの釣果はゼロ。そう簡単に釣れるものではないことを知らされるだけだった。  せめて夢のなかで大物を釣り上げようと、黒部のせせらぎを夢枕にゴ−チン。

■ 8月4日(金) 晴れ

5時30分起床、大物の岩魚の姿はついに夢のなかでも空振りに終わる。人数が少ないと何事も手際よく早い。あまりバタバタすることもない。静かな兎平の朝のひとときをのんびり過ごす。一般ル−トと違い、人の気配もほとんど無く、特別指定席で大画面いっぱいに広がるパノラマ映画でも見ている気分である。  7時25分兎平出発。途中何度か対岸への渡渉を繰り返しながら下降をつづけ、8時45分薬師沢出合に建つカベッケの小屋(現薬師小屋)に立ち寄る。どうやらまだA本隊は着いていないようだ。また、黒部上の廊下を遡行しているK隊も、ここに立ち寄り伝言してゆくこととしているがそれもない。  K隊はともかく、我等のA本隊は今日は雲の平からの下りであり、もう来ていてもよい時間であるがいくら待てども現れない。  11時過ぎに、黒部を遡行してきたというパ−ティに聞いたところでは、我々のK隊と思えるパ−ティは『上の廊下核心部の水量が多く、流れも速く、泳いで対岸へ渡ることが出来ず断念し、薬師岳の稜線へ登っていった。自分たちはいったん下り、高天が原新道に入り、立岩へ降り立ち、奥の廊下をつめてきた』とのこと。  12時05分、本隊待てども来ず。これ以上待てないため、小屋に伝言メモを張りつけておこうと、もう一度小屋には入ったところで本隊のメモを見つけガッカリ!。すぐに出発し先を急ぐ。  薬師沢は水の流れている谷芯はほとんど通ることもなく、沢の音も聞こえないくらい離れた暑い道がつづく。薬師沢左俣地点でやっと水場に出、喉をうるおす。  太郎山の東斜面を登っている途中で、我々の到着が遅れているのを心配して、サポ−ト隊(大塩、中塚、渡辺、藤原、谷口、佐伯)の出迎えを受ける。重い荷を若い藤原、谷口、佐伯に任せ、カベッケから3時間15分の登りを経て皆の待つ薬師峠のテント場に着きホットする。  すでに夕食の準備も進んでおり、我々のテント設営が完了するや、たちまち総勢22名の大パ−ティの宴がはじまる。  各隊の行動報告などを交えながら、それぞれが満足げな顔で交わすアルコ−ルの味もまた格別である。なかでも、黒部川上の廊下遡行隊はかなり苦戦した模様。遡行を断念し、薬師岳の稜線へ出るまでは、ヤブコギの連続となり、途中ブッシュの中でのビバ−クは水もなくなり辛かったようだ。  しかし、一方では『渡渉していても、足に身体をこすりつけてくる大きな岩魚もおり、やっと見つけたみみずで30pくらいの岩魚を釣り上げたが、ミミズや虫がたやすく確保できれば、餌の数だけ釣れそうだった。』など楽しい目にも逢っている。  夕食後は各隊から紅茶、ヨ−カン、その他残った食料がどんどん出てきて、宴はさらに盛り上がる。最後の夜は各隊混成のテント割りつけで寝ようということになったが、その結果、山東が女子5名のテントに入ることになり、他の男子部員がくやしがることしきり。

■ 8月5日(土) 晴れ

4時20分起床、朝食後テントを撤収し出発。太郎小屋の前に荷物をデポし、全員空身で北の俣岳の往復に向かう。肩の荷が無ければ気分も軽やか、視点も足元から離れ、峰々の展望を満喫しながら歩ける。ここから、野口五郎岳を経て三俣蓮華岳へのコ−スは、北アルプスの中では珍しく起伏の少ない稜線がつづくところだ。我々は北の俣岳で休憩の後引き返し、太郎小屋から折立へのコ−スに向かう。  日陰のないカンカン照りのコブ尾根を下りながら、膝の疲れからか足元が頼りなくなってきていることを感じながらの下降となる。やがて樹林帯に入り、頭からの照りつけはなくなったが、下がるにつれ気温も上がり、ムンムンしてくる。いつものことながら下山時のこの雰囲気がやるせない。  12時15分折立着。下山届けを済ませ、汗を拭き取りバスを待つ。どうやら3時間ほどの待ち時間らしい。  15時15分、やっとバスにのり、有明ダムを左に見ながら、ボンネットタイプの "山のバス"はゆっくりと下ってゆく。途中目もくらみそうになる切れ落ちた崖っぷちの細い山道を、確かなハンドルさばきでくねくね下り、16時20分富山地方鉄道の小見駅(現有峰口駅)に着く。  ここからは、電車に乗り継ぎ富山へ。富山で津川が不調を訴え、西尾リ−ダ付添いで18時20分発の特急 "雷鳥"で一足先に帰神。我々は深夜発の夜行列車とし、駅に荷物を置き、皆で少し離れた銭湯に行き汗を流す。  ビアガ−デンで乾杯!の後、北陸ツウの言葉から "金寿司がよい"ということになり、そこで腹ごしらえ、満腹・満足!気分で帰路につく。

■ 8月6日(日) 晴れ

  

ラッシュ少し前の大阪駅に着き解散。今年の夏山合宿を無事終了する。

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